第105回 多門靖容(2006) 定型言い切り形を持つ前置き表現の分析<要旨>

「定型言い切り形を持つ前置き表現」とは、〈形〉の面では、ガ/ケドを除いた言い切り形が、定型的な、謝罪・非礼詫び・労い表現となるもの。〈機能〉の面では対人接触場面で、実質的な迷惑・負担、また感情に配慮するものです。

(1)スミマセンガ/ケド、モウシワケアリマセンガ/ケド、ゴクロウサマデスガ/ケド、キョウシュクデスガ/ケド、シツレイデスガ/ケド(言い切り形はシツレイシマス)、オソレイリマスガ/ケド
(2)オキノドクデスガ/ケド、ザンネンデスガ/ケド、タイヘンデスガ/ケド

(1)は言い切り形使用が、特定状況との関与度において高いもの、(2)は低いものです。
(1)(2)の外側に、以下の(3)のように、言い切り形はあるものの、前置き表現として使えない(または使いにくい)群があります。

(3)アリガトウゴザイマスガ/ケド、ゴシュウショウサマデスガ/ケド、オジャマシマスガ/ケド、オツカレサマデスガ/ケド

以上の(1)〜(3)について、以下のような問いを立てます。

@なぜある群は前置き表現が可能で、ある群は不可能なのか。
A言い切り⇔前置きが可能な場合、言い切りでの意味・用法と前置きでの意味・用法はどんな関係になっているのか。意味の連続や特定の意味の抽出をどう捉えるか。
B個々の表現の意味・用法をどう書けばいいか。(例えばオソレイリマスガとキョウシュクデスガはどう違うか、など)。

作業はBが出発ですが、@A(特にA)を目標に置きます。今回の発表では、全貌を明らかにするまでには行きませんが、表現としてシツレイ、オソレイリマス、キョウシュクデスを取り上げ、上の問いに関し、部分的な解を考えたいと思います。

‐文献‐
岡本真一郎1992「感謝表現の使い分けに関与する要因(2)―ありがとうタイプとすみませんタイプはどのように使い分けられるか―」『愛知学院大学文学部紀要』22号
岡本真一郎・多門靖容2000「失礼の諸用法 ―用法の相互関連性に着目して―」『日本語教育』104号
多門靖容・岡本真一郎2005「定型の前置き表現分析のために」『人間文化』20号
Mizutani,O.&Mizutani,N. 1977 Nihongo Notes1, Japan Times
Mizutani,O.&Mizutani,N. 1984 Nihongo Notes6: Situational Japanese, Japan Times
Mizutani,O.&Mizutani,N. 1986 Nihongo Notes7: Situational Japanese, Japan Times
Mizutani,O.&Mizutani,N. 1987 Nihongo Notes8: Situational Japanese, Japan Times



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