第106回 野呂健一(2007) Construction Grammarからのアプローチによる同語反復表現の分析
                       ―「XXしている」「XといえばX」を例として―<要旨>

 現代日本語には、「子供子供している」「面白いといえば面白い」のように、同一文中で同じ形態の語が繰り返される表現(以下、「同語反復表現」と呼ぶ。)がある。
 これらの表現は、構成部分の意味の総和から全体の意味を完全には予測できないという点で一般的な慣用句と共通するが、慣用句は具体的な語の組み合わせが固定しているのに対して、同語反復表現は名詞の部分をある程度自由に入れ替えることができる点で異なる。
 本稿は、現代日本語の同語反復表現について、形式と意味との慣習的な結びつきを句のパターンにも認める構文文法(Fillmore et al. 1988, Goldberg 1995等)からのアプローチにより考察するものである。
 なお、今回は、同語反復表現のうち、「XXしている」「XといえばX」の2つの表現について、以下のとおり考察した結果を発表する。

(1) 名詞の反復形に「している」が接続した「(Yは)XXしている」という表現には、以下の2つの意味がある。いずれも主体に多数(量)の特徴が際立っていることを表すが、その特徴が何に由来するかによって区別することができる。

「(Yは)XXしている」@:<(Yは)多数(多量に)含まれているXの特徴が、際立っていて容易に知覚される状態である>
「(Yは)XXしている」A:<(Yは)Xの典型例やステレオタイプであると判断されるほど、多数(量)の特徴を示している>

(2) 「XといえばX」は、ある属性に焦点を当てることでカテゴリーを拡大したり縮小したりするカテゴリー化に関わるものである。また、同様にカテゴリーの周辺部分を際立たせる「XらしくないX」「XらしからぬX」がXカテゴリーに所属することを前提として周辺的な成員であることを示すのに対し、「XといえばX」はXカテゴリーに所属するかどうかを問題にする。

 「(Yは)XといえばX」:<(Yは)狭いXカテゴリーと広いXカテゴリーが想定される場合に、着目する属性や観点を変えることによって、前者には属さないことを前提として、後者には属すると判断することができる>

<主な参考文献>
国広哲弥(1985)「慣用句論」,『日本語学』4巻1号,pp.4-14
国広哲弥(1989)「文法にも慣用表現がある」,『言語』18巻2号,pp.40-41
国広哲弥(1997)『理想の国語辞典』,大修館書店
早瀬尚子・堀田優子(2005)『認知文法の新展開 カテゴリー化と用法基盤モデル』,研究社
松本曜編(2003)『認知意味論』,大修館書店
籾山洋介(2002)『認知意味論のしくみ』,研究社
籾山洋介(2006)「1-8. 認知言語学」,『言語科学の百科事典』,丸善株式会社,pp.157-177
森田良行・松木正恵(1989)『日本語表現文型 用例中心・複合辞の意味と用法』,アルク
吉村公宏(1995)『認知意味論の方法―経験と動機の言語学』,人文書院
Fillmore, C.J., Kay, P. and O'Connor, M.C. (1988) “Regularity and Idiomaticity in Grammatical Constructions: The Case of let alone”, Language 64(3), pp.501-538.
Goldberg, A.E. (1995) Constructions: A Construction Grammar Approach to Argument Structure, University of Chicago Press.(河上誓作・早瀬尚子・谷口一美・堀田優子訳 (2001)『構文文法論 英語構文への認知的アプローチ』,研究社)
Kay, P. and Fillmore, C.J. (1999) “Grammatical Constructions and Linguistic Generalizations: the What’s X doing Y? Construction”, Language 75(1), pp.1-33.
Lakoff, G. (1972) “Hedges: A Study in Meaning Criteria and the Logic of Fuzzy Concepts”, CLS 8, pp.183-228.
Lakoff, G. (1987) Women, Fire and Dangerous Things: What Categories Reveal about the Mind, University of Chicago Press. (池上嘉彦・河上誓作他訳 (1993) 『認知意味論』,紀伊國屋書店)



もどる