第107回 堀川智也(2007) 題目提示でも対比でもない「ハ」−<要旨>


 「ハ」は通常「題目提示」と「対比」の二つの用法を持つとされるが、この二つの関係はどう考えるのが妥当だろうか? 「題目」とは本来、談話上の概念ではなく一文中のある部分と後続部分の表現上の落差構造に関わる関係である。一方、「対比」とは、ある文で語られる事態とそれとは別の事態との関係に関わる関係である。つまり両者は、次元を異にする働きなので、一文中に両者が共存することもあれば、「題目提示」でも「対比」でもない「ハ」がありうることになる。例えば、「松坂はレッドソックスに、井川はヤンキースに行った」において、「ハ」は題目を提示するとともに同時に対比を表している。では、「題目提示」でも「対比」でもない「ハ」とはどんな場合か? 一つは、尾上(1995)が「額縁的詠嘆」と名づける例で、「はるかクナシリに白夜は明ける」のような場合で、「白夜」を先行固定してそれに説明を与えるのでもなければ、もちろん「対比」でもない。
 本発表では、このような「題目提示」でも「対比」でもない「ハ」の用法が、「額縁的詠嘆」用法以外にも実はかなり多くあることを示すとともに、それらの用法がなぜありうるのかその内実を問い、そのことを通して「ハ」の本質に迫ることを目標とする。



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