第96回 高橋圭介(2004)動詞「信じる」とその周辺<要旨>

本発表は、博士論文「思考動詞の意味分析」として提出予定の内容の一部をまとめたものである。

 本発表では、思考動詞(=「人間の精神的活動を表す動詞)」の一つである「信じる」と、その周辺に位置付けられる語として「信頼する」「信用する」を考察対象とし、それら対象語の詳細な意味記述を目的とする。

 まず、「信じる」に関しては、引用節をとる場合と名詞句をとる場合、さらには「信じられない」の形で<程度の甚だしさ>を表す場合にわけて考察を行い、3つの別義を認定した。

 続いて、「信じる」と「信頼する」「信用する」の比較を行い、「信じる」と「信頼する」/「信用する」の基本的な相違点(見方を変えれば「信頼する」と「信用する」の共通点)を確認した上で、「信頼する」と「信用する」の比較を行い、二つの語の相違点を明らかにした。

 分析結果として得られた意味記述は以下の通りである。

「信じる」

・別義1:<主体が><未確認の事柄を><真であると><みなす>

    例:あのときの(自分の)判断は正しかったと信じている。

・別義2:<主体が><(宗教・思想など)ある特定の考えを>

     <正しいものと><みなし><それに従う>

    例:私は仏教を信じている。

・別義3:(<事実とは認定できないほど>)<ある事柄の程度が甚だしい>

    例:自分が金メダルをとったなんて、信じられない

「信頼する」:<主体が><対象(主に人や情報)を>

       <主体にとって有用であると><みなす>

    例:信頼できる{弁護士/仲間/会社/情報/報告/検査結果}

「信用する」:<主体が><他者の発言・行動・(他者が提供する)

       モノを><確かなものであると><みなす>

    例:{医者/銀行/商品}を信用する。

 「信じる」の別義1と2は提喩、別義1と3は換喩により、それぞれ関連付けられる。

 また、「信頼する」と「信用する」は、<対象>をどのようなものとして捉えているかに関して対立する。<対象>を<有用なもの>(活躍・活用が期待できるもの)と捉えているのが「信頼する」、<確かなもの>(ミス・間違いがないもの)と捉えているのが「信用する」である。



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