第97回 廣瀬裕子(2005)多義動詞の意味拡張に関する一考察−動詞「おく」を例として−<要旨>

 本研究では、現代日本語において複数の意味を持つと考えられる動詞、即ち多義動詞の中から「おく」という動詞を取り上げ、その意味分析を行なう。そして、その意味拡張のメカニズムを明らかにすることにより、多義動詞の意味拡張の1つのパターンを示す。特に、本研究では、認知領域、ベースとプロファイル、メタファー、メトニミー、イメージ・スキーマといった認知言語学における諸概念を援用した分析を行なう。

 本研究では、「おく」の意味は、物理的空間領域において抽出されたイメージ・スキーマが社会的空間領域、心理的空間領域、一次元領域へと写像されることにより拡張されていること、そして、補助動詞「〜ておく」の意味は、本動詞「おく」のイメージ・スキーマが事象領域へと写像されることにより生じていることを論じる。また、物理的空間領域におけるイメージ・スキーマをベースとし、その〈起点〉〈経路〉〈終点〉のプロファイルを変換することにより、〈移動+存在〉〈存在〉〈行為の終了〉という3つの異なる意味が得られることを示す。そして、物理的空間領域において見られたイメージ・スキーマのプロファイル交替のパターンがその他の領域でも同様に認められることを指摘する。

【主な参考文献】

Clausner, Timothy C. and William Croft1999)“Domains and image schemas. Cognitive Linguistics 10-1, 1-31.

Croft, William1993)“The role of domains in the interpretation of metaphors and metonymies.Cognitive Linguistics 4-4, 335-370.

Lakoff, George1987Women, Fire, and Dangerous Things: What Categories Reveal about the Mind. Chicago and London: The University of Chicago Press.

Lakoff, George1993)“The contemporary theory of metaphor.Metaphor and Thought 2nd ed.ed. Andrew Ortony, 202-251. Cambridge: Cambridge University Press.

Lakoff, George, and Mark Johnson1980Metaphors We Live By. Chicago and London: The University of Chicago Press.

Lakoff, George, and Mark Turner1989More than Cool Reason: A Field Guide to Poetic Metaphor. Chicago: The University of Chicago Press.

Langacker, Ronald W.1987Foundations of Cognitive Grammar,Vol.1: Theoretical Prerequisites. Stanford: Stanford University Press.

Langacker, Ronald W.1988)“A View of Linguistic Semantics.Topics in Cognitive Linguistics, ed. Brygida Rudzka-Ostyn, 49-90. Amsterdam/Philadelphia: John Benjamins.

Langacker, Ronald W.1991Foundations of Cognitive Grammar,Vol.2: Descriptive Application. Stanford: Stanford University Press.



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